スペシャルマーケティング

実戦で使えなければ机上の空論です。営業やマーケティングの現場は正に「戦場」です。

売上5原則の使い方

売上5原則の使い方

売上5原則の使い方

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(1)戦略構築

売上5原則は、数値で経営状態を把握するツールですが、その経年変化を追うことで現状分析を行うだけでなく、中長期的な方向を考えるツールとして使えます。

例として、「客数×客単価チャート」を挙げてみます。

客数と客単価を経年変化で追っていくと、売上構造が毎年どう変化しているのかがよく分かります。

日本マクドナルドの実際のデータを使って分析してみましょう。

1994年

2003年

客数(百万人)

477

1,151

客単価(円)

717

598

売上高(百万円)

173,196

299,823

店舗数(店)

1,169

3,773

理論的には、客数×客単価=売上となるはずですが、おそらく別個に計算しているのでしょう。

ここでは理解促進が目的なので気にしないことにします。

1994~2003年にかけて、売上高は73%伸びています。

その内訳は、客数が増えたことによるものです。

店舗の伸びを確認すると、3倍以上になっていますので、売上高の伸びは店舗数の拡大によって伸びたことになります。

では、売上を上げるために、次に客数を増やすか、客単価を増やすかというのが、戦略の方向性になります。

客単価をなるべく落とさず、客数を増やすことはできるかを検証・志向していくのが拡大戦略で、来店頻度・商品単価・購買点数を上げることができるかを検証・志向していくのが深掘り戦略です。

これを一目で評価できる、議論できる点がこのチャートの便利なところです。

広さ深さチャートと近いものがあります。

深さ=客単価とはいえない側面もあるため、全く同じではありませんが、広さ深さチャートの数字が取れない時は、これで代用するのも1つの手です。

ここでは、最も一般的な客数×客単価を使いましたが、既存顧客を対象に購買頻度×購買単価(点数×単価)チャートを使ったり、5原則の組み合わせで色々なチャートが書けます。

(2)早期警戒レーダー

売上5原則は会社の計器・レーダーです。

それぞれの数字を定期的に追っていれば、売上が下がってきた事態になった時、そこに問題があるのか、フォローしやすくなります。

顧客が流出しているなら、競合が自社の顧客を奪っているのでしょう。

顧客頻度が下がっているなら、競合に流れているのか使用量や来店頻度が減少しているかなどの問題が推測されます。

商品単価が下がってきているなら、競合が価格勝負に挑んできているのか、営業マンが値引き交渉に負けているのかの問題が考えられます。

完全な原因特定はできないにしても、問題範囲をあらかじめ予想をつけることができますから、素早い対策・行動が取れます。

(3)戦略策定と効果測定

5原則はそれ単独で評価すべきではなく、数字と戦略は表裏一体の関係にあります。

戦略はもちろん売上を上げるためにあるわけですが、「とにかく売上を上げる」のではなく、「売上のどの分を挙げるために、こうやる」というのが戦略です。

「5原則全部上げよう」では戦略とは呼べません。

全部上げることが目標でもいいですが、少なくとも優先順位をつけて下さい。

ニーズの広さ深さでいえば、ニーズを広げる場合は「新規顧客の増加」を重視し、指標として追っていきます。

ニーズを深める場合は「購買頻度」「買上点数」「商品単価」などの増加を目標として、監視していきます。

それぞれの指標に数値目標を立てると、戦略との整合性が出てきます。

5つのうち何を重視するかは、戦略によって違います。

例えば、既存顧客を重視する、1人ひとりにがっちり食い込んで離さない、いわば「一見さんお断り」戦略であれば、下の表の右側のような優先順位になります。

売上五原則と広さ深さ

立ち食いそば屋モデル

一見さんお断りモデル

新規顧客の増加

流出顧客の減少

購買頻度の増加

買上点数の増加

1点あたり商品単価の向上

◎:最重要 ○:重要 △:努力目標

1人の顧客を大事にし、定期的に連絡を取って流出を防ぎながら、リピートを促進します。

同時に、顧客に合った商品転換・提案をして、クロスセル(1人の顧客に色々なものを買ってもらう)をするわけです。また、新規客を取らないため、顧客数が限定されます。

すると、必然的に顧客単価を上げることになります。

広さ深さチャートでいくと左上、狭く深くを志向する戦略です。

この戦略を実行するには、流出防止、単価向上、点数増加の3つの目標を立て、ミーティングなどでもしつこく報告・共有し、この項目で成績評価を行うようにするわけです。

逆に、新規顧客を重視する、いわゆる立ち食いそば屋戦略であれば、表の左側のような優先順位になります。

商品単価は犠牲にして、とにかく数多くのお客様に来店してもらうのです。

ドトールとスターバックスを例に取ってみますと、両者の戦略中の重要指標は、以下のようになっていると思われます。

広さ重視型

ドトール

深さ重視型

スターバックス

新規顧客の増加

流出顧客の減少

購買頻度の増加

買上点数の増加

1点あたり商品単価の向上

◎:最重要 ○:重要 △:努力目標

これは他の指標との相対的な優先順位です。

ドトールは顧客が流出してもいいと考えているわけではなく、それよりは他の指標の優先順位が高いはず、ということです。

ドトールはコーヒーを200円と安く設定し、商品単価は犠牲にして、多くのお客様に高頻度来店してもらう戦略です。

「安いから来て、何回も来て。もちろんおいしいよ」というのが基本戦略と思われます。

対して、スターバックは顧客を選びます。スターバックスは禁煙ですが、コーヒーを飲む時にたばこが絶対いるというお客様は、最初から捨てています。

広さを求めていないのです。

しかし、スターバックスを好きになってくれたお客様には、ずっと流出も浮気もせずに通い続けて欲しいのです。

その分、顧客単価は高いのです。一番安いコーヒーメニューを比較すると、ドトールの200円に対しスターバックスは300円です。

ドトールは立ち食いそば屋型、スターバックスは料亭型に近いといえます。

売上5原則は戦略と戦術を繋げる

戦略を立てる時は、売上5原則で数字に落とし込むのです。

また、その作業により戦略のどの要素がどのように売上増加に繋がるのかが明らかになります。

5原則に落とし込まれない場合は、直接繋がらないということになります。

その意味で、売上5原則は戦略と売上を橋渡しするツールです。

また、各数字の優先順位がつけられない場合は、戦略が総花的になっていて、取捨選択ができていない可能性があります。

「選択」をしていないということですので、戦略の再考が必要かもしれません。

(4)戦術の漏れを防ぐ

優先順位は必要ですが、5原則全部上がった方がいいに越したことはありません。

売上5原則は漏れを防ぐツールでもあります。

1)新規顧客の増加

新規顧客獲得のため宣伝をしたりします。

コーヒーチェーンでいえば、新しい店を出すことが一番の獲得法です。

店の商圏は狭いので、開店すればその地域のお客様を取ることができます。

ただ、スターバックスは新規出店しすぎるとブランドが維持しにくくなりますし、客層も選ぶため、出店には慎重になるでしょう。

ドトールは店舗を増やすことは戦略とも合います。

2)流出顧客の減少

スターバックスは、その独特の雰囲気、品揃えが流出防止に役立っているのではと思います。

ドトールは、ある程度の流出は仕方ないと思っているのでしょうが、商品の品質を上げて流出防止を狙っているともいえます。

3)購買頻度の増加

ドトールは明らかに、価格を低く設定してそれを狙っているわけです。

4)買上点数の増加

これはどちらとも、サイドメニューやコーヒー豆・器具などとのクロスセルを行い、客単価を上げようとしています。

5)1点あたり商品単価の向上

スターバックスは価格を高めに設定しています。

エスプレッソ関連のメニューはエクストラショットを50円で加えられます。

アイスドリンクのサイズはShortからVentiまで4段階あります。

大きいサイズを飲んでもらえばその分単価が上がるわけです。

ドトールも単価向上策は打っています。

昔は180円のサイズしかありませんでした。

90年代後半にMサイズ、Lサイズを導入し、今(2012年現在)はSサイズ200円、Mサイズ250円、Lサイズ300円になっています。

 

このように、どこを重点に置くかは戦略によって違いますが、それでも数字を上げるために何ができるかということを考えれば、戦術・マーケティングアクションの漏れを減らすことできます。

売上5原則を意識している「コーチ」

アメリカの革製品ブランド「コーチ」は、売上高の10%を占める優良顧客が3~4週間に1回来店することを把握しており、その優良顧客に新鮮さを感じてもらうために、毎月新製品を導入しているとのことです。

これにより、購買頻度を高めると同時に、飽きさせないという流出防止にもなっています。

さらに、バッグに合った財布やアクセサリーなどのコーディネイト買いも誘引しているとのことです。

会社が明確に購買頻度・購買点数という指標を経営目標として意識していることが分かります。

ルイ・ヴィトンですと、名刺入れでも2~3万円、ハンドバッグで10~20万円し、1点あたりの商品単価は非常に高いです。

対してコーチの売れ筋は、4~5万円だそうです。

売上5原則をルイ・ヴィトンと比較すると、このようになると推測されます。

コーチ

ルイ・ヴィトン

新規顧客の増加

流出顧客の減少

購買頻度の増加

買上点数の増加

1点あたり商品単価の向上

◎:最重要 ○:重要 △:努力目標

敷居の高い高級路線で行くヴィトンに対し、コーチは常にドアを開放するなどして気軽に入店できる雰囲気作りに注力し、身近な感じを出しているわけです。

BASiCSでいえば、どちらも戦場は「高級な外国ブランド」ですが、その中でも「高級感vs身近感」と戦い方は違い、売上5原則にも違いが出ています。

コーチは購買頻度と購買点数を重視し、この2つの数値を常に追うことが重要になります。

ヴィトンは商品単価を重視し、これが落ちてくるとブランドの高級感や顧客層が落ちてきているという、死活問題になるわけです。

このように、戦略の数値化により、その際が明確になることが分かってもらえたかと思います。


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